東京大学読書サークルこだま 公式ブログ

東京大学読書サークルこだまの公式ブログです。部誌『こだま』に掲載している文章などを公開していく予定です。

2020-05-14から1日間の記事一覧

『こだま』創刊号

こんにちは、東京大学読書サークルこだまです。 先月に発行した『こだま』創刊号の文章を、はてなブログで公開することにしました。 目次は以下の通りです。 活動紹介 読書班 活動紹介……………………………………………………橋詰和直https://kodama-echo-reading.hatenablog.c…

創刊号 編集後記

表紙の写真は、2019年7月13日、新宿御苑にて撮影。なかなか明けない梅雨。穏やかな雨が、水面に次々と丸い水紋を広げていくのを、見ていた。言葉にできないくらい美しい景色。それを言葉にした時、きっとこぼれ落ちてゆくものはたくさんある。言葉にしたこと…

『夢日記』

その夢を見たのは、打ち上げ花火を見た日の夜だった。 まわりは真っ暗で、暗闇に慣れた目が辛うじて地面の輪郭を捉えていた。私は山奥にいた。山、と言っても、草木が生えている様子はない。ゴツゴツした黒い地面を見つめながら、星を見ようと歩いてのぼって…

連載「『注文の多い料理店』の謎を解く」    第一回 制裁を受けたのは誰か

○はじめに 『注文の多い料理店』の謎について、またこの連載について ○制裁を受ける権力者たち ・紳士二人に対する制裁 ―あらすじを整理しつつ ・店主の山猫に対する制裁 ・『オッペルと象』 オッペルに対する制裁 ○誰がどこまで制裁を受けるのか ・『カイロ…

創作班 活動紹介

「東京大学読書サークルこだま」の創作班の班長を務めています、文学部三年の山下です。 創作班の活動は、自発的に文章を書いて、部誌『こだま』に掲載することです。 文章の形式や内容は、基本的には自由です。批評や書評、文学研究に近いものでもいいです…

読書班 活動紹介

1.活動内容神保町さんぽ・ビブリオバトル・本(課題図書)を読んだ感想の共有・しおり作り・東大生協駒場書籍部さんとのコラボ企画・創作班と合同での五月祭/駒場祭の出店等及び企画会議。 2.活動頻度1 回/月。前の月に企画した活動及び次の月に行う活動の企…

人間の根源を問うこと ―ゴーギャン・夏目漱石の紹介

六人部昭典『アート・ビギナーズ・コレクション もっと知りたいゴーギャン 生涯と作品』東京美術、2009年 ゴーギャンの人生は、旅に満ちたものでした。彼はまず、幼少期の6年間を家族と共にペルーで暮らしています。大人になってからも、しばらくの間はパリ…

旅としての小説

紋切り型のざっくりした表現だが、海外でも日本でも、近代以降の小説には「個人」が描かれるようになったと言われる。人間の心理と言い換えてもよい。夏目漱石の『こころ』が長きにわたり評価されているのは、まさしく個人の「心」の内奥そのものが小説のテ…

溶け合う ―川端康成『伊豆の踊子』を読んで―

雨水や、川の流れ、陽の光を反射する海、そして零れ落ちる涙。それらの水が全てやわらかく溶け合って、静かに澄んだ充足感を心に残す。『伊豆の踊子』を読み終わったあと、そんな感慨に襲われた。 川端康成の情景描写、とりわけ水の描写は圧巻の美しさだ。私…