東京大学読書サークルこだま 公式ブログ

東京大学読書サークルこだまの公式ブログです。部誌『こだま』に掲載している文章などを公開していく予定です。

夢一夜(仮)

通りすがり、夜通し
独り語りでも聞かせてよ
二人よがり、灯りなんかに
気を取られないように
踊り明かせないかな?

 

体より心を見て、と
シャッフルのラブソングが言ってる
歌い上げるロマンティシズム
理性がお好きみたい

 

明け方の街の雑踏
罪もない仮面ばかり

 

恋と呼べなけりゃ意味がないと
責め立てる常識たち

 

通りすがり、夜通し
独り語りでも聞かせてよ
二人よがり、灯りなんかに
気を取られないように
踊り明かせないかな?

 

意味深なエモーションだけの
言葉に重ねたくはない
切ないドラマにできるほどの
起承転結もない

 

恋だとか他人だとか
名前なんてどうでもいい

 

ひとときの陰り、永遠の光
瞳に刻ませて

 

青い空のもとでは
二度と飛べない暗い憂い
記憶のアルバムの隅っこ
その他大勢とは、少し違っててほしい


通りすがり、夜通し
独り語りでも聞かせてよ
二人よがり、灯りなんかに
気を取られないように

 

踊り子より可憐に
期待通りにステップしても
一人芝居、客は朝焼け
よくあるお話の
よくある幕切れね

 

 

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上の作品は、僕が作詞で参加しているアマチュアバンドの、とあるメロディーに乗せて構想した歌詞の原案です。ただし必要以上にアダルトな空気感を纏ってしまったため、全面的に作り直すべきだろうと判断し(なにしろ色気が売りのバンドではありませんので……)、メンバーに見せる前に先回りして自らボツを出しました。ですからタイトルにも「仮」がついています。

 

歌詞とはメロディーありきのもの。それ単体での見栄え以上に、声に出して歌ったときに輝くことを目指して作られるもので、したがってここに載せたものは言わば不完全な作品です。

 

にもかかわらず載せているのは、むろん今号のゆるやかなテーマ「偶然」に合致する内容でもあったからですが、前述のような偶然性を帯びた成り立ちそのものがじつは面白いのではないかと思ったのです。

 

『こだま』に載せようと思って作ったわけではない、それどころか世に出さない予定のものだった。それでもたまたまテーマに合うから、載せてみる。創造的な営みにはそういう自由さがあって良いだろう、という思いは僕の信条のひとつでもあります。

 

またいずれバンドのほうで、これとは違った詞をメロディーに乗せた「完成品」も発表することになるでしょう。ぜひ聴いてみてください。バンド名は「Stray Beep」といいます。